eラーニングの動画教材はモチベーションを低下させる理由

eラーニング=動画の時代ではない

企業研修のeラーニングと聞いて、多くの方が最初に思い浮かべるのは動画教材ではないでしょうか。
実際、多くのeラーニングは動画を中心に構成されており、eラーニング=動画というイメージが定着しています。

一方で、私たちは近年、動画中心のeラーニングが学習者のモチベーションや学習成果に結びつきにくい場面が増えていることも強く感じています。
動画が悪いという話ではありません。しかし、動画を中心に据える設計が当たり前になった結果、学習者の体験が置き去りになっているケースが少なくありません。

本記事では、なぜ動画教材がモチベーション低下につながり得るのか、そして今後のeラーニングに求められる考え方について整理します。

動画が「特別」だった時代は終わりつつある

かつて動画教材は、分かりやすさや臨場感という点で大きな価値を持っていました。
テキストだけでは伝わりづらい内容も、映像であれば理解しやすいという側面があり、動画=学習効果が高いという認識が広がった背景には確かな理由があります。

しかし現在は、動画そのものが珍しい情報形式ではありません。
スマートフォンを開けば、SNSやニュース、広告など、あらゆる場面で動画が自然に目に入る時代です。
動画が当たり前の環境になったことで、学習者にとって動画は「集中して視聴するもの」から「流れてくる情報を取捨選択するもの」へと変化しています。

動画は「流し見」されやすく、不要ならすぐにスキップされる

現代の動画視聴は、注意深く視聴するスタイルばかりではありません。
興味が薄ければ流し見になり、必要性を感じなければ視聴そのものが後回しにされます。

さらに、動画は不要だと判断されれば短時間でスキップされ、倍速再生で消費されることも一般的です。

こうした環境にもかかわらず、企業研修の現場では、倍速再生を不可にしたり、最後まで見ないと次へ進めない仕様にしたりして、動画視聴率や完了率を研修の評価指標として扱うケースも見受けられます。
学習者の立場から見れば、学びが「理解するための時間」ではなく「消化するための時間」になってしまい、結果としてモチベーションを下げる要因になり得ます。

汎用型パッケージ教材が動画偏重を加速させている

動画中心のeラーニングが広がった背景には、汎用型のパッケージ教材の存在も影響しています。
あらかじめ用意された動画教材を導入すれば、研修のオンライン化を短期間で実現できますので、運用負荷を抑えられる点で、導入側にメリットがあることも事実です。

しかし、汎用型の教材はどうしても一般論になりやすく、自社の業務や現場と直結しない内容も少なくありません。

学習者が内容を自分の仕事と結びつけられないまま視聴することになれば、学習意欲の低下や形骸化につながりやすくなります。

興味があるから見る動画と、義務感で見る動画はまったく違う

同じ動画でも、学習者の心理状態によって学習体験は大きく変わります。
自分が知りたい、学びたいと思って視聴する動画と、義務として視聴させられる動画では、集中度も納得感も異なります。

企業研修では、学習の必要性を十分に説明できないまま受講が義務化されることがあります。

その結果、学習者は「なぜこれを学ぶのか」が分からない状態で動画を視聴することになり、学びが表面的になってしまいます。

動画を見てテストを受ける学習は、何を生み出しているのか

多くのeラーニングは、動画を視聴し、その後に理解度チェックとしてテストを実施する構成です。
この形自体が悪いわけではありませんが、ここで確認すべきは、学習者にどのような変化を期待しているのかという点です。

動画の内容を一時的に覚えて選択肢に回答できても、業務で必要な判断や行動に結びつかなければ、研修の目的としては不十分です。研修の評価が「完了」や「点数」に偏ることで、学習者の行動変容という本質的な成果が置き去りになる危険があります。

成人の学習で重要なのは、能動性と成果物である

成人学習においては、受け身の情報取得だけでは定着しにくいことが知られています。
重要なのは、学習者が能動的に取り組み、自分の業務に引き寄せて考え、アウトプットを伴う学習体験を設計することです。

特に、学んだ内容を基に成果物を作成するプロセスは、学習を「理解」から「活用」へと押し上げます。

自分の仕事に直結した成果物を作ることで、学習者は研修の価値を実感しやすくなり、モチベーションも維持されます。

eラーニングは導入が目的になりやすい。だからこそ設計と評価が必要になる

eラーニングは導入が比較的容易であるため、導入そのものが目的化しやすい側面があります。
しかし本来、研修は「導入」ではなく「学習者の変化」が目的です。
導入後の学習体験がどのようなものになるのか、学習が現場にどのように影響するのかまでを見据えた設計が必要です。

また、導入後の運用や評価の仕組みがなければ、学習は形骸化しやすくなります。
受講状況の確認だけでなく、学習が業務にどうつながったかを見直し、改善を重ねる仕組みが重要になります。

まず確認すべきは、eラーニングを導入する理由である

ここで一度、シンプルな問いを立ててみてください。なぜeラーニングを導入するのか。何を変えたいのか。学習者に何ができるようになってほしいのか。

この問いが曖昧なまま動画教材を増やしても、学習者の納得感は得られません。目的が明確になれば、教材は動画である必要がない場面も見えてきます。

これからのeラーニングはマルチメディア設計が前提になる

今後のeラーニングに求められるのは、動画を中心に据えることではなく、目的に応じて最適な教材形式を選択し、学習体験全体を設計することです。動画に加えて、テキストや図解、PDFマニュアル、ケース資料、外部リンク、ワークシートなどを組み合わせ、学習者が理解しやすく、業務に活用しやすい構成にする必要があります。

場合によっては、動画よりもPDFのマニュアルを用いた教材の方が有益なこともあります。重要なのは形式ではなく、学習者が主体的に学べる設計になっているかどうかです。

eラーニング=動画の時代ではない

動画は有効な手段の一つです。しかし、動画を使えば学習が成立するという前提は、すでに見直すべき段階に来ています。eラーニングは、学習者の行動につながって初めて価値を持ちます。完了率のための動画ではなく、業務に結びつく学習体験を設計することが、これからの研修に求められます。

eラーニングのご相談について

弊社では、eラーニングに関するご相談を承っております。弊社は教材を制作する会社でも、eラーニングシステムを提供する会社でもありません。日本でも数少ない、eラーニング構築支援を専門とするコンサルティング会社として、学習設計から構築支援までを一貫してサポートしています。

eラーニング学習が効果的で、効率的で、学習者にとって魅力的な体験となるように、目的の整理から設計、教材の方針策定、運用・評価の仕組みづくりまで、貴社の状況に合わせてご支援いたします。

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