社員研修の効果を高めるインフォーマル学習とは——eラーニング設計に取り入れるべき理由と具体的な方法

新入社員に「入社してから一番役に立った学びは何でしたか?」と聞くと、多くの場合、研修プログラムの名前は出てきません。

「先輩が商談後にくれたひとことアドバイス」「失敗した案件の振り返りで気づいたこと」「他部署の人と雑談する中で知った業務の裏側」。

こういった答えが返ってくることがほとんどです。

これは偶然ではありません。

人が本当に学ぶ場所は、研修室の中だけではないのです。この現実をeラーニングの設計に活かすことが、社員教育の質を根本から変えます。

社員の学びの大半は「研修の外」で起きている

教育研究の分野に「70:20:10モデル」という考え方があります。

人の成長の70%は仕事上の経験から、20%は他者との関わりから、残りの10%だけが公式な研修や教育から生まれる、というものです。

この10%の部分が「フォーマル学習」、残りの90%が「インフォーマル学習」にあたります。

多くの企業が社員教育の予算と時間を投じているのは、このわずか10%の領域です。

90%の学びが起きている場所——現場での経験、同僚との対話、失敗からの気づき——には、ほとんど手が届いていません。

eラーニングがこの現実を無視した設計になっている限り、どれだけコンテンツを充実させても、現場を変えることはできません。


なぜ「見るだけ」のeラーニングは効果が出ないのか

フォーマル学習の代表格は、講師が一方的に話す集合研修と、動画を見せるだけのeラーニングです。

どちらも「情報を届ける」ことには長けていますが、「行動を変える」ことには弱い設計です。

理由はシンプルです。

人間の記憶は、受け取るだけでは定着しません。使うことで定着します。

認知心理学では「検索練習効果」と呼ばれますが、一度インプットした情報を「思い出す」「使って考える」「他者に説明する」というプロセスを経ることで、知識は長期記憶へと移行します。

動画を最後まで視聴するだけでは、このプロセスが一切発生しません。

視聴完了率が高くても現場が変わらない企業が後を絶たないのは、この設計上の問題が原因です。

インフォーマル学習をeラーニングに組み込む3つの方法

では、eラーニングの設計にインフォーマル学習の要素を取り込むには、具体的にどうすればいいのでしょうか。

① 「考えさせる問い」を学習の起点にする

コンテンツの冒頭に、答えのすぐには出ない問いを置きます。

「あなたならこの状況でどう判断しますか?」「この事例で何が問題だったと思いますか?」といった形です。

受講者は答えを探しながらコンテンツを読み進めるため、受け身の視聴ではなく能動的な思考が生まれます。インフォーマル学習の「自分で考え、発見する」という体験を、eラーニングの中に再現する設計です。

② 他の受講者との非同期ディスカッションを設ける

同期型のグループワークが難しいeラーニングでも、非同期のディスカッション機能を使えば協働学習は実現できます。

他の受講者の考えを読むこと自体が学びになり、自分の意見を書くことでアウトプットが生まれます。

「誰かに見られている」という適度な緊張感が、学習への関与を高める効果もあります。

③ 学んだことを「現場で試す」課題をセットにする

eラーニングで学んだ内容を、翌日の業務で実際に使ってみる小さな課題を設定します。

「今週の商談でこの問いかけを試してみてください」「次回の会議でこの視点で発言してみてください」という形です。

学習と現場をつなぐこの設計が、行動変容への最短ルートです。

eラーニング単体で完結させようとすることをやめ、現場での実践をセットにして初めて、学習は意味を持ちます。


効果測定の指標も変える必要がある

インフォーマル学習を取り入れた設計に変えるなら、効果測定の指標も合わせて見直す必要があります。

視聴完了率は「受講した記録」にすぎません。

学習の効果を測る指標としては不適切です。

代わりに設定すべき指標は2つです。

ひとつは「行動変容の有無」——研修後に現場での行動が変わったかどうか。

もうひとつは「業績への影響」——学習への投資が最終的に会社の成果につながっているかどうか。

この2つを軸にすることで、eラーニングは初めて「コストではなく投資」として機能し始めます。

「研修で教わること」より「現場で気づくこと」を設計する

インフォーマル学習の本質は、学習者が自分の経験と結びつけながら意味を見出していくプロセスにあります。

誰かに教わるのではなく、自分で考え、試し、気づく。この体験こそが、行動変容につながる学びです。

eラーニングの役割は、この「気づき」を生み出す場を設計することです。

コンテンツを届けることではなく、受講者が能動的に動き出すきっかけをつくること。

この視点の転換が、社員教育の効果を根本から変えます。

「eラーニングを導入しているのに現場が変わらない」と感じているなら、設計の中にインフォーマル学習の要素が組み込まれているかどうかを、今一度確認してみてください。

FAST LINKは、行動変容につながるeラーニング設計を支援します

FAST LINKでは、インフォーマル学習・協働学習・アクションラーニングを取り入れたeラーニングの設計・構築を、教育工学に基づいて支援しています。

視聴完了率ではなく行動変容を生み出す学習体験を、自社で内製化できる体制づくりから一緒に取り組みます。

「今の研修設計を見直したい」「eラーニングで本当に現場を変えたい」——そんな課題をお持ちの企業様は、ぜひ一度ご相談ください。

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